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CHAPTER 04

倉庫を脱出して大道寺一派のアジトに辿り着いた二人は摩衣を治療し、彼女から話を聞くことにする。外山と繋がっていながらキャバ嬢を装って「ヘルメス」で真島に近づく、偽者であることを知られながら真島を花菱から逃すなど、不可解な行動を重ねてきた彼女の真意を問い尋ねると、摩衣は自身の過去についてぽつぽつと語り始める。


摩衣は2019年の東城会解散によって解体された東城会系末端組織の組長の娘であり、幼い頃から「器量の悪い女に男の言うことを聞く以外の価値はない」という言葉を刷り込まれて父親の言いなりになっていた。就職も東城会系のフロント企業に制限されていたこと、大解散によって職場がなくなり自身の給料を取り上げていた父親が蒸発したことで全てを失い、蒼天堀でキャバ嬢をしていたところ外山の策にハメられ裏風俗で働くようになったことを明かす。やがて摩衣は「夜の女王」と呼ばれるまでの売上を上げ、生活も向上するが、自身を苦しめる「こんな人生を歩みたくなかった」という想いからは逃れられずにいた。そんな中で外山から葛原の替え玉役に見出され、「花菱牧生のもとで葛原寧々として生き、葛原寧々として死ぬ」ためにフロンティア・プロジェクトの陰謀に寄与したのだった。

しかしある時外山の真意が花菱を殺して花菱グループの金を手に入れることを知った彼女は、それが達成されてしまえば自分は消されると悟り、真島や護矢、葛原本人がポートフロンティアに隠された全ての陰謀を暴き、自身を外山のもとから解放してくれるように、外山の目を盗んでは折々で真島たちに協力するような行動を取っていたという。やがて摩衣は葛原の姿を奪おうとしながら、事態解決を二人に任せるしかなかった自身の浅はかさを謝罪したのち、「外山を倒して」という願いを口にし、意識を失う。

二人は状況を整理し、外山が花菱を殺し花菱グループとの裏取引成立を目標としていること、また護矢が月井に狙われていることから、ポートフロンティアに赴き花菱、護矢を奪還することを目標に定める。さらに外山と月井が次の行動を起こすまでに時間がないと考えた護矢の上官は、一日後の夜を刻限とし、一派の力を総動員して侵入経路を用意すると言う。二人はそれまで束の間の休息を取ることになるが、葛原は置名が自身へ向けていた感情への戸惑いと、摩衣の願いに自分はどう向き合えばいいのかという苦悩を吐露する。

自分は墓場事件を経て得た「もう誰も不幸にしたくない」という願いと、「全ての人が本質と共に希望を持って生きられる社会を作る」という信念のために更生支援に携わってきたが、実はそれこそが置名、ひいては花菱をも傷つけていたのであり、自分にはもう更生支援に携わる資格がないのではないか、と葛原は言う。さらに葛原は、自身は自己防衛のためとはいえメリケンビレッヂに身を隠して「葛原寧々」の役割を摩衣に押しつけ、その結果として彼女をこんな目に遭わせてしまったのではないか、自分には摩衣の願いのために立ち上がることはできないと言う。


真島はその姿にかつての、自ら表舞台から姿を消すことで葛原や元暴たちを守った気になっていた自分を見、たとえ葛原がそうしても現状を変えることはできず、「何事も生きつづけることでしかやり直せない」と説く。それでもこれから置名や花菱や摩衣、元暴の未来に向き合うことへの不安を隠せない葛原に、真島は再会を果たした夜に葛原が言った、「なぜなりふり構わず自分を頼ってくれないのか」「たとえどれだけ不都合を被ったとしても、葛原を今さら諦めることなどできない」という言葉を返す。「この事件がどんな結末を迎えても、葛原が信念を持ち続ける限り、自分はそれを共に背負い続ける」と言う真島に、葛原は「自分は真島の『子』で本当に良かった」と不安を振り払い、外山と月井を止め花菱・護矢を奪還し、摩衣の願いを叶えるために、共に立つことを誓う。

一方、護矢はポートフロンティア内部で目を覚まし、やがて同じく拘束されていた花菱と合流する。外山にも花菱グループにも裏切られ、「自分を助ける者など誰もいない」と現状をすっかり諦観する花菱に対し、護矢は諦めるにはまだ早いと返す。その脳裏には、「フロンティア・プロジェクトの陰謀は誰かが一人で背負い込まなければならない宿命ではない」と自身を引き留めた葛原の姿があるのだった。

 


翌日の夜、葛原と真島は大道寺一派の用意したルートでポートフロンティアに向かい、外山組の強襲を退けながら中枢部に到達し、ついに外山を追い詰める。元暴たちの未来を守るために外山を倒すと言う葛原と真島に、外山は「たとえ自分を倒したとしても、この社会に元暴たちやヤクザに人生を壊された者がいるかぎり、彼らの人生をやり直したい、背負わされた運命を超えたいという『夢』につけ込む輩は何度も現れる」と言うが、激闘の末に撃退される。

 

同刻、護矢と花菱は、外山の手下たちに追われながらも花菱の知識を頼りに脱出に成功し、ヘリポートにてついに姿を現わした月井と対峙していた。月井は生前の寿造のような「純粋なる悪」として東城会・近江連合なき日本裏社会を牛耳る野望を語り、護矢と「白樺寿造の遺志を継ぐ者」同士、一対一で本当の決着をつけることを要求する。それに対し護矢は、極道の潮目が変わりつつある社会で寿造のあり方を模写するだけでは寿造の「極道で最大多数の人間を幸福にする」という本懐を遂げることはできないと言い、寿造の遺志を「極道くずれの身の上でも助けられる限りの人間を助ける」という形で継承することを宣言し、死闘の末に月井を倒す。

そこに大道寺一派のヘリが到着したことで護矢・花菱は回収され、ポートフロンティアからの脱出に成功。またそこに乗り合わせていた護矢の上官から、真島・葛原によって外山が倒されたことを知る。月井を倒した護矢の姿、また一度は敵対した身ながら自身のために外山を撃退した真島・葛原に感化された花菱は、突如ゲリラ配信を始め、自身が外山組と繋がっていたこと、ポートフロンティアで作られた製品を海外マフィアに流していたことも含め、自らの悪事を全て告白し、世間を欺いて元暴たちを搾取していたことを謝罪。花菱牧生が生きているという事実を発信し、外山やグループの行なおうとしていた情報工作を無効化する。

葛原・真島もヘリからの通信で護矢が月井を倒したことを知り、花菱の暴露によってフロンティア・プロジェクトに隠された悪事が露見したことで事態は終息すると思われたが、外山は葛原・真島に対し、今更自分を倒しても意味はない、と笑う。追い詰められた外山の狙いはポートフロンティア地下の電源施設に仕掛けた時限爆弾、そしてポートフロンティア各所に仕掛けた爆弾を作動させ、電源事故に見せかけて居住エリアにいる元暴たちごとポートフロンティアを海に沈め、「最高の絶望」を感じながら死ぬことにあった。

外山は自身の目論見をポートフロンティア全体に放送したうえでゲートを閉ざし、元暴たちを居住エリアに閉じ込めてしまう。護矢はヘリポートに取り残された月井を助けるためにヘリの高度を下げようとし、ヘリポート近くでの爆発に巻き込まれ、転落。 手負いの月井を背負いながら逃げ道を探して彷徨うことになる。護矢の人生を壊した張本人である自分をなぜ助けるのか、と問う月井に対し、護矢は「罪を償わずに逃げる」ことは死んでもさせないと返すのだった。

一方の葛原・真島は居住エリアゲートのセキュリティを解除して元暴たちを避難させようとするが、何重にも書き換えられた複雑なセキュリティを解除することはできず、絶望的な状況に追い込まれる。二人は腹をくくり、時限爆弾を解除して被害を最小限に食い止めるべく地下に向かう。すでに起きた爆発によってポートフロンティアが焼け落ちる中、二人は一縷の望みをかけて最後のコードを切るのだった。

 


2024年春、神室町。葛原は、用事を終えて神室町ヒルズから出てきたところを真島に迎えられる。二人は爆弾の解除に成功し、大道寺一派によってポートフロンティア内部から命からがら助け出されたのだった。

「今こうして神室町を歩いていることが奇跡みたいなものだ」 と言う葛原の脳裏には、置名の姿があった。
月井との接触後、恐怖から逃亡した置名は、花菱のゲリラ配信を見て事態を把握し、護矢を閉じ込めるために自身が書き換えたゲートのセキュリティシステムを遠隔操作して解除したのだった。その結果居住エリアにいた元暴たちは全員が避難することができ、護矢・月井も脱出に成功したのだった。

しかしそんな奇跡の裏には、大きな問題が横たわっていた。置名や花菱が自らの意志で出頭したこと、外山・月井が警察に身柄を拘束されたことでフロンティア・プロジェクトは停止され、身寄りのない元暴たちが宙に浮いてしまっていた。こうした事情のため、葛原はMD再建ではなく元暴たちやドロップアウターに対する福祉に専念することを決め、現在は必要な手続きに奔走していた。そしてそれは、「罪を犯した者への福祉など不可能だ」という置名の本心に対する、葛原なりの応答でもあった。

やがて二人は護矢と落ち合い、それぞれの近況を共有する。護矢は、摩衣が大道寺一派に保護され社会復帰を目指していることを知らせたのち、自身は大道寺一派との契約を終え、元暴たちの未来のために働くという目的のために生きると言い、神室町を後にする。

護矢を見送った二人は、肩を並べて帰路に着く。起居を共にすることは、次の仕事のための準備期間にあって、互いの負担を減らすべくどちらからともなく提案したことだった。二人は出会った頃とは様変わりした神室町の様子を見つめつつ、今回の騒動を経てほんの少し変わった互いの存在の意味を感じながら、夕暮れの道を歩いていくのだった。

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