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CHAPTER 02

翌日、真島は偽葛原の真意を考えながら蒼天堀に戻り、花菱と外山の真の目的を明らかにするための手がかりを探す。その中で元極道のホームレスと出会った真島は、彼がホームレスになる前に属していた組が外山によって壊滅させられたことを知る。外山は近江連合に所属していた時代から、金策やデマなどを駆使して権力者を転落させることで莫大な金を稼ぎ、「蒼天堀のヒル」の異名を取っていたのだった。また真島は、外山によって破滅に追い込まれた者たちを保護するホームレス村があることを知り、手がかりを得るべく「メリケンビレッヂ」地下エリアに向かう。

メリケンビレッヂに辿り着いた真島は、ホームレス村の村長と蒼天堀の情報屋「赤目」に出会う。赤目の指示で地下闘技場を勝ち抜き、自身が伝説の「嶋野の狂犬」その人であることを証明した真島は、ホームレス村の最深部にある赤目のアジトへと案内され、そこに匿われていた葛原本人と再会して無事を確かめ合う。葛原は、偽葛原が語った「花菱による強制的な買収が起こった」という事象は事実だが、その後自身は外山組組員による監視・付きまといを受け、頼ることのできる者のいない状況下で姿を消さざるをえなくなったこと、メリケンビレッヂにはMD蒼天堀支店でホームレスたちへの仕事提供を行っていた縁から辿り着いたことを明かす。

また、真島が偽葛原の確証を得たきっかけとして「ヘルメス」の存在に言及すると、葛原は自身が「ヘルメス」の開発者であることを明かし、サーバーからユーザ情報を復元して現在世間が葛原と認知している女性は「摩衣(まい)」という全身整形を受けた元風俗嬢であることを突き止める。二人は赤目の情報網から摩衣の在籍していた店の店長を見つけ、摩衣が外山の営む裏風俗に流れていったことを聞き、摩衣と外山の繋がりが確定する。さらにヘルメスにて摩衣について調べると、彼女は客にライバル嬢を襲わせるなど、非合法な手口で蒼天堀界隈一の売上を誇り、「夜の女王」という異名を取る女性であった。

その夜、アジトで夜を明かすことになった真島は葛原に対し、自身が姿を消して葛原を守っていたつもりになっていたこと、それによって葛原を危険な目に遭わせてしまったことを謝罪する。そんな真島に葛原は「なぜなりふり構わず自分を頼ってくれなかったのか」、「たとえどれだけ不都合を被ったとしても、自身の孤独に向き合ってくれた唯一の相手であり、前を向く希望をくれた真島を今さら諦めることなどできない」という本音をぶつける。真島が困難な状況にあっても決して自分から手を離そうとしない葛原の想いの深さと、葛原が「自分が守ってやりたい存在」であるだけでなく、「自分の抱えるものを受け止め、ともに背負ってくれる存在」であることを再認識したことで、二人は数年越しの和解を果たすのであった。

 

真島は置名に本物の葛原を見つけたことを報告し、また緊急なことがあり一度合流したいという置名の言葉を受け、置名をメリケンビレッヂに呼び寄せる。地下にやってきた置名は葛原の無事を喜び、葛原も安堵するが、それも束の間、置名は妙な男に尾けられていることを明かす。真島は外山組の刺客を疑うが、置名を尾行していたのは白樺護矢その人だった。実は葛原が炎上騒ぎに巻き込まれてからすぐ後に、月井桂が獄中で不審死を遂げるという事件が発生していた。護矢は二つの事件の関連性を疑い、葛原失踪の裏で糸を引く人物を探すために「大道寺一派」のエージェントとして活動していた。そして生前月井が懇意にしていた相手であり、水面下できな臭い動きをしていた外山、外山が現在深い繋がりを持つ花菱にアタリをつけ、蒼天堀にやってきたのだった。

護矢は組織の情報網を通じて得た、花菱と外山の過去を明かす。花菱は物心ついた頃より児童養護施設で育った少年であり、「花菱」の姓は養子に貰われたことで得たものであった。そして養父の営む企業(花菱グループの前身)に跡取りとして就職した花菱に対し、事業の新規性に目をつけ、乗っ取りの末に会社を外山組のフロント企業化したのが外山であった。外山は花菱を養父に代わる「新しい表向きの社長」に祭り上げ使いつぶそうとするが、経営者としての才覚を発揮し莫大な権力を得た花菱との力関係は逆転し、いまや外山組は完全に花菱の支配下にあるのだった。

 

さらに護矢は、花菱が施設から出ることになったのは、施設が近江連合の地上げに遭い、職員や子どもたちが離散したことがきっかけであると明かす。真島は花菱の行動原理が「ヤクザへの復讐」であると仮定し、まずはその施設を襲ったヤクザを突き止めることを提案するが、護矢はそのヤクザは白樺寿造であると言う。護矢は、寿造亡き今、花菱が葛原を餌に自身をおびき寄せ、寿造の名を継ぐ自身を殺すことでせめてもの復讐を遂げようとしていると考え、自分一人で花菱を倒すために動いていたのだった。また護矢は、花菱が「葛原が護矢の妹であること」を知るためには「墓場事件」の内情を知る人物が不可欠であり、ここから月井本人はまだ死んでおらず、生前懇意にしていた外山に情報を流していると考え、外山を叩いて月井を探し出し、本当の決着をつけようとしていた。

真島たちを牽制し一人で花菱らに立ち向かおうとする護矢を葛原は引き留め、フロンティア・プロジェクトの陰謀は元暴全体の未来に関わるものでもあり、誰かが一人で背負い込まなければならない宿命ではないと諭す。さらにそこに護矢を監視していた護矢の上官からの通信指令が入り、護矢は渋々ながら真島・葛原・置名と行動を共にすることになる。


護矢が仲間に加わり、葛原と真島、置名は本格的に現状打破のために動き始めるが、置名のパスがなければ自由に出入りすることのできないポートフロンティアで手練れの外山組の構成員たちを相手に闘うことはリスクが高く、何とかして花菱・外山をポートフロンティアから引きずり出す必要が生じる。

そんな中、護矢の上官から、葛原自身が偽者として素性を隠したまま、マーキュリーデュオ再結成を発表するのはどうか?という案が持ち上がる。四人はそれに乗り、葛原が肉声で「フロンティア・プロジェクトの特別顧問になってしまった本物の葛原に代わり、日本の元暴たちの未来のためにMDを再結成する」ことを発表する動画を撮影し、別所の大道寺一派のコンピュータから配信。フロンティア・プロジェクト始動会見でメディアの目が葛原に向いていたのもあって動画は爆発的に拡散され、その熱はついに花菱が摩衣を使った「偽者には厳正な対処をする」というライブ配信を行うまでになる。四人はそれに合わせて葛原自身の肉声でライブ配信を行い、「葛原寧々が二人いる」という状況を生じさせ、花菱を揺さぶる。やがて四人はしびれを切らした花菱から、秘密裡に対面で話し合う提案を引き出すことに成功する。さらにそこに真島から事情を聞いた旧東城会・近江連合の面々、護矢に近しい元白樺組組員たちも駆けつけ、事態は思わぬ速度で好転していく。

ライブ配信から数日後の夜、葛原たちはついに蒼天堀近郊のホテルで花菱と対面することになる。葛原と真島、応援組が花菱の足止めをし、その裏で護矢・置名が花菱の護衛で手薄になったポートフロンティアに侵入し摩衣に接触するという作戦のもと、それぞれが配置につくが、突如としてメリケンビレッヂ地下に手榴弾が投げ込まれ、葛原と真島は出発する直前で爆発に巻き込まれてしまう。その場にいた全員が九死に一生を得るが、本物の葛原の居所がすでに花菱側に漏れていたことが判明し、作戦の実行が不可能になる。また爆発によって葛原と真島は地上に逃れざるをえなくなるが、外はすでに外山組組員たちによって包囲されていた。葛原・真島はなんとか包囲網を抜け出し、かつてマーキュリーデュオが使っていた廃倉庫に逃げ込むが、外山組の監視の目はすでに蒼天堀中に張り巡らされており、身動きが取れなくなってしまう。

また同刻、ポートフロンティア周辺で待機していた護矢は、上官からの通信でメリケンビレッヂでの爆発を知る。護矢は狼狽しつつも置名に状況を伝えるが、置名は「知っとります」とだけ呟き、葛原たちの動向を逐一報告する花菱とのやりとりが表示されたスマホの画面を見つめているのだった。

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