top of page

CHAPTER 03

護矢に対し自身が初めから葛原たちを裏切っており、葛原たちの動きは初めから全て筒抜けだったことを明かした置名は、護矢のもとに外山の手下たちを差し向けて姿を消す。護矢は手下たちを退け置名を追おうとするが、事前に置名がゲートのセキュリティを書き換えていたことで、ポートフロンティア内部に閉じ込められてしまう。


外山の手下たちをいなしながら護矢はポートフロンティア中枢部に到達し、ついに花菱と相まみえる。花菱は、置名がMDの不当な買収を内部で幇助していたことを明かし、真島と葛原はもう間もなく置名の手で始末されるだろう、他人の人生を食いつぶす「ヤクザ」には相応しい結末だと笑う。さらに花菱は、外山経由で月井から「墓場事件」の情報を得たこと、それを利用した葛原の炎上やMDの買収はすべて自分の根回しによるものであることを明かす。花菱にとってのフロンティア・プロジェクトは、葛原という元暴に対する更生支援の新しい旗印となりうる偶像を破壊し、たくさんの元暴たちをポートフロンティアという海外マフィアによる搾取の罠に嵌め、寿造の死によって実質的に不可能となった「ヤクザへの復讐」を遂げるための道具にすぎないのだった。


護矢は花菱にかつて葛原を殺して野望を達成しようとした「墓場事件」での自分を重ね、花菱の言葉を「他人の人生を奪うことで得られるものなどない」と否定する。護矢は花菱に対し、花菱には葛原の人生を代償に寿造の本懐を遂げようとしたかつての自分にはならせない、花菱の人生を壊したのは寿造の業であり、その遺志を継ぐ自分の命と引き換えに置名を止め、ポートフロンティアの元暴たちを解放するよう食い下がるが、花菱は退かず、護矢に襲いかかる。

同刻、葛原と真島は倉庫の中で息を潜めていたが、ついに銃を構えた置名が姿を現わす。動揺を隠せない葛原に対し、置名は自身の過去を述回する。元々置名はフリーターとして神室町でくすぶっていた時分にヤクザの営む闇金とのトラブルで全財産を失い、素寒貧になっていた。そんな中で葛原と出会い、MDに居場所を手に入れたことから、置名は葛原に対し深い恩義の心を抱いていたのだった。しかし葛原が蒼天警備保障との提携事業──ヤクザのための福祉に乗り出すことを決め、さらに置名を提携事業の実働役に任命してからは、置名は葛原からの信頼を嬉しく思う一方で、「ヤクザに人生をめちゃくちゃにされかかった自分がなぜ他人の苦しみを糧に生きてきたヤクザたちを支援しなければならないのか」と葛藤していた。そんな中で「ヤクザへの復讐」のために葛原を手にかけようとしていた花菱に出会い、葛原自身がヤクザと縁深い身であることを明かされ、極めつけには花菱の「俺たちの人生を壊したヤクザを許してはならない」「葛原を蹴落とし、次はお前が輝く番だ」という甘言に惑わされ、MDの強制買収(文書偽造、情報提供等)を内部で幇助してしまう。その後は多額の報酬を得て、ポートフロンティアでの安寧な生活も手に入れるが、大きな罪の意識に苛まれていたのだった。

置名は自分の苦しみを花菱以外の誰が掬いあげてくれるのか、葛原がヤクザに力を貸せるのは葛原自身が本当の意味では「白」ではなかったためであり、一度黒に染まった人に手を差し伸べることは「白」の世界では不可能な理念にすぎないと涙を流す。何も答えられない葛原に、置名は引き金にかけた指に力を籠めるのだった。


ポートフロンティア中枢部にて花菱らに対峙する護矢だったが、戦力差もあり徐々に消耗していき、ついに膝をついてしまう。それを見た花菱は喜悦の形相で護矢を始末しようとするが、そこに外山が現れ、花菱の動きを制する。狼狽する花菱をよそに、外山は護矢に対し、置名の銃ははじめから撃てない仕様になっていること、それゆえ葛原と真島は無事であることを告げる。さらに外山は「ネタバレ」と称して、「寿造が花菱のいた施設を襲った」という情報はまったくのでまかせであり、自身こそが花菱の施設を地上げによって壊滅させたヤクザであることを明かし、「あらゆる手段を利用して他人を絶望に叩き落し、快楽を得る」という本性を露わにする。

外山は元々は近江連合の三次団体に所属し、上昇志向もなく借金の取り立てなどの小銭稼ぎをして暮らしていた。しかし18歳の時に、「墓場」の処遇を巡る初代会長派と二代目派の対立に際して、二代目派に属していた自身の組の組長が寿造によって殺されるのを目撃する。やがて外山は寿造に殺される際に組長が見せた「自身の運命に絶望しきった顔」が忘れられず、殺しや拷問といった汚れ仕事をすすんで請け負うようになるが、同じだけの快楽は得られず断念。その結果、直接的な暴力以外のあらゆる手段で人を絶望させる方法を追求するようになり、欲深い権力者に近づき、表向きには従順な側近を演じながら、裏ではあらゆる手を駆使してその者の資産や勢力を掌握し、ある日突然全てを奪い取り絶望させるという「遊び」を繰り返してきたのだった。


外山によれば、外山が花菱の養父の会社を乗っ取ったのも「遊び」の一環であり、当初は花菱にも適当な頃合いで絶望を与える予定であった。しかし花菱の経営の才能と、花菱がかつて自身が地上げによって壊滅させた施設の生き残りであり、自身がそのヤクザであることには気づかぬままヤクザへの復讐心を募らせていることを知り、遠大な「遊び」を始めることを決意する。その後は「自分ならば施設を襲ったヤクザの正体が分かるかもしれない」という言葉で花菱を釣り、いつか花菱を絶望に叩き落す瞬間を心待ちにしながら、カタギを食い物にするはずが立場を逆転された間抜けな子分を演じ続けていたのだった。

憔悴しきった花菱をよそに、外山はスマートフォンを取り出し掲げる。そこには花菱グループの幹部たちが映っており、画面の向こうでは花菱グループCEOを幹部のうちの一人が継ぐ合意が成立していた。外山は花菱とヤクザである自身が繋がっていることを自ら花菱グループ上層部にリークした上で、事実の露見を恐れる花菱体制に疲弊していた幹部たちと「500億円を渡す代わりに事故に見せかけて花菱を殺し、CEOを別の幹部にすげ替え、事実隠蔽を手伝う。その後は花菱グループにはいっさい関わらない」という条件の取引を交わし、花菱グループから花菱の居場所を完全に奪っていたのだった。

護矢は寿造の影が勝手に利用された怒りから外山の目的を問う。外山は大解散によって近江連合の看板を失った自分が、これから大量の海外マフィアが流入してくるであろう日本裏社会で「遊び」を続けられなくなることが耐えられないと語り、彼らと渡り合うに見合ったカネと業績──すなわち、花菱グループのカネと”真島をはじめとするかつての日本極道の重鎮の首”が欲しくなったと言う。そこで外山は花菱のヤクザへの復讐感情と本当の絆を求める心を利用し、墓場事件の情報と「白樺寿造が施設を襲ったヤクザである」という嘘をエサに、花菱が葛原に敵愾心を抱くように仕向け、いずれ真島や護矢が葛原のために自身のもとに集うことを目指してフロンティア・プロジェクトを開始させたのだった。やがて護矢は花菱を連れて逃げようとするが、体力の限界から倒れ伏し、外山によってポートフロンティアの地下に閉じ込められてしまう。

同刻、倉庫内。置名は何度も引き金を引くが弾は出ず、隙を見た真島が銃をドスではじきとばしたことで丸腰になる。真島と葛原はなんとか倉庫を脱出するが、そこには死んだはずの月井桂その人がいた。月井はスマートフォンで現在ポートフロンティア中枢部で起こっていることを二人に示した上で、花菱ははじめから外山に裏切られていたこと、自身は旧知の仲である外山の手引きで獄中死を偽装して脱獄したこと、その見返りとして外山に「墓場事件」の真相とポートフロンティアの製品の卸先である海外マフィアを紹介し、裏社会に舞い戻ったことを明かす。


さらに月井は外山の手下を呼び寄せ、暴行され息も絶え絶えの摩衣を二人の前に転がす。それを見た置名は「自分もいつか殺される」という恐怖のままに逃亡し、葛原がここまでして外山に協力する理由を問うと、月井は「白樺寿造の遺志を継ぐ者は一人でいい」と言い、護矢の命を狙っていることをほのめかしてその場を立ち去るのだった。

フォロー

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

©2022 by Bosatsu Cupid。Wix.com で作成されました。

bottom of page